10/09/2025
Fragrance Talks vol.2 KAI

「人のために、関わっていたい」

自分は何が得意なのか、
誰かみたいに特別じゃない、
そんなふうに悩んだことのある人にこそ、届けたいインタビューです。


今回お話を聞いたのは、ジュエリー販売を通して「つながり」を育んでいる、かいさん。
消防士からアパレル、そして現在に至るまでの道のりの中で、
在り方の幸福のかたちをお話ししてくれました。

そんなかいさんに、今の自分に贈りたい香りを調香していただき、香りに込めた思いからも、かいさんを深掘りたいと思います。精油を選び、ブレンドを重ねる過程はこれまで歩んできた道のり、価値観が自然と映し出されていきます。

 

JODAN.(以下 J):まず、自己紹介をお願いします。

かい:はい、かいと申します。
現在はジュエリーの販売をしています。

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J:お仕事においてと普段のプライベートにおいて、何かリンクする考え方はありますか?

かい:そうですね。人が好きなので、人と関わっていたいという気持ちは常にあります。「人のためになりたい」という想いも、強いかもしれません。

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J:「人のために」というのは?

かい:今やっているジュエリーの仕事もそうなんですが、お客さまがそのジュエリーを身につけて、日常の中で少しでも幸せを感じてくれたら嬉しいなと思っています。 会話を通して、携われるのが、とてもありがたいですね。

最近は、友達同士がつながる場面に関わることが多くて、自然とそういう関係性に自分が関与していることに、喜びを感じています。

自分は、主役になれないタイプだと思っているんです。どちらかというと、右腕やサブキャラのようなポジションで輝ける人間なのかなと。だからこそ、人と人とをつないだり、そういう役割を担いたいと思っています。

人と人が繋がるって奇跡だとおもって。

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J:その価値観って、どこからきていると思いますか?

かい:親ですね。うちの両親が、まさにそういう人たちなんです。とても優しくて、「人のために損をしてもいい」くらいの考えを持っていて。「謙虚であれ」っていう意識も強いです。

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J:ご両親、お二人ともそうなんですね。

かい:はい、二人ともです。だから自分の中にも、その価値観が染みついているんだと思います。東京に出る2年前までは、そんなこと全然考えていなかったんですけど…反抗期でしたから(笑)

「“器用貧乏”は、自分だけの才能かもしれない」

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J:東京に出てくる前は、消防士をしていたって聞いて、ちょっと驚きました。

かい:はい。高校を卒業して、親の勧めで医療系の専門学校に進学しました。医療系の資格が活かせて、公務員にもなれる職業として考えたときに、消防士が合っているかもしれないと思ったんです。それで消防士になり、5年間働きました。

でも途中で、ずっと好きだった洋服の仕事がしたくなって。昔からファッションは好きでしたが、「それを仕事にする」という発想はなくて。田舎で育ったので、「公務員=正解」という価値観の中にいたんですよね。

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J:ご両親には、やっぱり反対されましたか?

かい:すごく反対されました。25歳ぐらいのときに「辞めたい」と伝えたら、父には「それなら縁を切る」と言われて、母からも「好きなことを仕事にするなんて甘いよ」と厳しく言われました。家族のことは大切だったので、それが本当につらかったです。

それでも、気持ちは抑えきれませんでした。2年ほどずっと悩み続けて、ようやく東京に行く決意をしました。職場に退職届を出し、新しい仕事と住む場所も決めて、すべて準備してから、家を出る3日前にようやく親に伝えました。

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J:家を出る3日前?! 最大の反抗期ですね…!

かい:本当にそうでした(笑)夜行バスで東京に向かったのですが、その前に母方の実家にも挨拶に行きました。滞在時間は本当に1日だけくらいでしたね。


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「“好き”が“やりたいこと”とは限らなかった」

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J:東京に出て、アパレルで働き始めてみて、どうでしたか?

かい:それが、、、楽しかったんですけど、次第に「洋服が好き」よりも「人と話すことの方が好きだな」と気づいたんです。

今ジュエリー販売の仕事をしているのは、アパレルでの接客に比べてもっとお客さまとゆっくりお話ができる環境があったからです。

ジュエリーって、ファッションの一部でありながら、人生の節目に関わる場面が多くて、とても魅力的なんです。

たとえば、結婚指輪を探しているカップルや、「母が亡くなった後、自分に何か贈るものが欲しくて」と来てくださる方もいます。

そういった“人の物語”に立ち会える瞬間がとても好きです。商品そのものよりも、その裏にある感情や会話にこそ、自分はやりがいを感じています。

 

「香りは、地元を思い出すスイッチみたいなもの」

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J:いろいろな転職も経てきて、これまでの人生で、忘れられない香りってありますか?

かい:やっぱり、地元の自然の香りですね。実家は花農家だったんです。ダリアやトルコギキョウ、ストックなどを育てていて。もちろん花の香りもあるんですが、それ以上に“青くさい”香り…土の匂いや、茎の青っぽさ、そういう“リアルな香り”が自分の中にすごく残っています。

花屋さんともまた違って、蔵や作業場の独特な空気というか、子どもの頃はそれが当たり前だったんですけど、東京に来てから、「あの空気が自分の原点だったんだな」って思うようになりました。

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J:東京に出て来たことで、かいさん自身の原風景を改めて感じることができたのですね。今の自分に香りを贈るとしたら、どんな香りを選びますか?

かい:やっぱり、地元の自然の香りですね。落ち着きますし、安心するんですよね。「自分の根っこ」に戻れるような気がして。「人のために生きたい」とか、「謙虚に在りたい」とか、そういう気持ちを思い出させてくれます。

 

【 カイさんが調香を体験してつくった香りは… 】


⚫️ トップノート
立ち上がりは、「何者かになろうとする自分」を映し出すように。
ブラックスプルースのシャープな香りに、マンダリンの甘やかさが重なります。
柑橘の中でもとりわけ甘さを持つマンダリンは、新しい環境に柔らかく溶け込みながらも、ブラックスプルースが芯の強さを求めるように香り立ちます。


⚫️ ミドルノート
やがて訪れるのは、都会のスピード感と雑踏。
その一方で、どこか懐かしい実家の花農家を思わせる温かさも漂います。
チューリップ、リリー、ヒヤシンス、イランイラン――華やかな花々のブーケのような香りが、アパレルやジュエリー販売で活躍されるカイさんならではの煌びやかな都会の景色を思い起こさせます。


⚫️ ラストノート
ラストに広がるのは「安心」と「気づき」。
パチュリとミルラの深みのある香りが静かに溶け合い、
「何者かになる」ことではなく「ただ在ること」そのものに気づかせてくれるよう。
慌ただしい日常の中でも揺らがない決意と、足元から満ちる安心感が余韻として残ります。

 

 

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「“やりたいこと”より、“どう在るか”」

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J:今のかいさんって、「やりたいこと」よりも「どう在るか」をすごく大切にされているように感じます。

かい:まさに、そうなんです。「やりたいこと」っていうのは、東京に出てからあまりなくなってしまったかもしれません。でも、「人と人をつなげたい」という感覚は、どんどん強くなっています。

将来的には、人と人が自然に会話したり、つながっていったりするような、そんな空間をつくれたらいいなって思っています。

「自分がいたから、あの人とあの人が出会えた」っていう瞬間って、すごく“生きている実感”があるんですよね。つながりが生まれるプロセスのほうが、自分にはしっくりくる気がします。

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J:かいさんのSNSでも、かいさんの投稿ってすごく“まっすぐ”で“等身大”に見えます。その姿に、安心している人はたくさんいると思います。

かい:そう言ってもらえるのは、本当にうれしいです。最近は「素直に言葉にすること」の大切さを、あらためて感じていて。

たとえば、地元に帰って自然に触れたり、親や姉と話したりするなかで、「あ、これって昔から感じていたことだったな」って気づくことがあるんです。そうやって“やわらかい場所”に触れることで、自分の“あり方”を思い出すんですよね。だから今は、「どう在りたいか」に軸を置いて生きていきたいなと強く思っています。

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「幸福とは、“している”より、“在る”ということ」
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J:これまで選んできた道を、揺れながらも自分で決めて歩んできたことが、すごく伝わってきました。あらためて伺いたいのですが、今のかいさんにとっての“幸福”って、どんな状態でしょうか?

かい:うーん「何かをしていること」よりも、「どう在るか」を大切に過ごすことでしっくりきているときが、いちばん幸福かもしれません。

たとえば、誰かと誰かの間に自然に立って、つなげる役割ができているとき。そこに自分が「いてよかった」と思える瞬間。そんなときに、ああ、生きてるなって感じられる気がしています。

 

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ジョダンでは不定期に「自分だけの香りをつくるフレグランス調香体験」を開催しています。みなさんも自分の支えになるような香りを作ってみませんか?

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